■今度はDSを併発しない病院で!(図1~8)

(図 1)初診時(2011年9月24日)、69歳。典型的なDrySocket状態。歯槽骨が完全に露出している。多くのDry socket症例を診ているが、TRUE Dry socketは年に1症例も経験しない。当処置で痛みから完全に開放させる事ができる

(図1)口腔内視鏡で局所の詳細を把握

(図2)早期に抜歯しないと、右下7番遠心部にすでにう蝕進行(↑)

(図8)2016年2月22日(4日後)抜糸直前。疼痛(-)日常生活に支障なく、硬いものを噛んだときのみ少し痛む程度、術後鎮痛剤服用(-)、内Diathermy透射

(図7)2016年2月19日、翌日の状態。局所のみ内Diathermy透射。鎮痛剤(-)

(図6)限りなく母体に侵襲を加えないため、歯槽骨の骨開削は全く施さず、分割抜歯を施行した。内Diathermy、Moist wound treatmentとHSP(Heat Shock Protein)の3者併用療法を応用

(図4)当Clinicでは、受診患者全員に一般検血をして全身状態を把握する。当症例では、直近の検診Dataを参照した

(図5)今回はHBV-Ag、HCV-Abを追加検査した。今回は感染症が無いので安心して手術に望める

              無痛抜歯
 筆者のClinicでは、外来外科手術をすべて無痛で施行して好評を得ている。その中で、一般に頻度の高い抜歯のヒントを記す。

1.抗生物質のPremedication(前投薬)、Preoperative Analgesics
2.術前HSP産生(全身)
3.Preoperative Irradiation(術前透射)
4.多量の水(消毒剤は禁忌)での局所洗浄によるBiofilmの除去
5.High Skillでの抜歯
6.鎮痛剤投与
7.Postoperative Irradiation(術後透射)
8.術後HSP産生(局所、全身)
9.術後経過観察には消毒剤は一切使用禁止


(無投薬で施行したい場合は1、6をはぶくことも可能)
              これで明日から名医になれる!
★ 術前から対応して手術に臨めば、120%DSを発症させないことが可能!!★



 筆者はこれまで口腔領域への高周波治療に関する論文を発表してきた。2006年には外科的Diathermy(透熱療法)と内科的Diathermyの医学的位置づけに成功した。2009年には我が国初の高周波治療の本格的なバイブル『Diathermy』を発刊した。その原理、活用方法などに関してはその著書を参考にしていただきたい。本稿では、Yahoo知恵袋のベストアンサーに選ばれ、当HPにアクセス数の多いDry Socket(DS)(Alveolar Osteitis)への応用を症例別に紹介する。DSは術者が起こせば信用を失い、来院しなくなればほっとする反面、評価は堕落する。他医院から来れば手こずる症例である。Diathermyの真髄である内科的Diathermyの生物学的作用、Moist Wound Healing(湿潤療法)とHSP(Heat Shock Protein)・温熱療法を併用すると、即座に“痛みが取れる”、“治癒が始まる”という今までの治療法の常識をくつがえす症例が続出する。

                  
Dry Socket(DS)

●定義:抜歯創の疼痛を自覚症状とする疾患で、抜歯窩に血餅がみられないため歯槽骨が露出し、激痛が特徴。冷温水による刺激痛、飲食物による接触痛が強く、痛みの範囲も抜歯窩だけでなく顎骨周囲全体に拡大する場合もある。下顎の埋伏智歯の抜歯後症例が多い。

●原因:我が国では抜歯窩の局所感染と過度のうがいによる血餅の形成不全が主な原因と考えられている。いかに臨床経験豊かな術者が十分な注意を払って抜歯を行っても、必ず数%の割合で生じるとの報告もある。しかし、海外では血餅不足が原因に挙げられず、術者のSkill、抜歯時の歯冠・歯根の分割の程度、抜歯本数(単独抜歯症例に好発し、多数歯抜歯には通常起こらない)、抜歯部位、歯周病の有無などが危険因子とされている。さらに抗生物質、経口避妊薬、ビスフォスフォネート、ステロイド剤など服用中には併発しな
いという報告もある。我が国と海外では原因のとらえ方が異なる。
 
文献的にDSの原因と言われているものをまとめてみた(表1)。

(図 3)手術時の骨侵襲の大きさがうかがえる。この部位を再掻爬すると再出血のRiskが高く、その効果もない。

(図 2)下歯槽管上壁の損傷が観察される。大量出血と術後の頤神経麻痺の原因

(図 1)側の抜歯時の大きな切開線。抜歯窩底部は深く、当Clinicの特殊なLED光源を用いても正確には観察できなかった

(図 5)来院時に持参していた薬剤の一部。担当医も藁(ワラ)にもすがる思いで、あらゆる薬剤を処方しているようである。疼痛が軽減されない、多剤投薬された時点でEscapeを決意

(図 4)十数時間かけて当Clinicへ。車中泊。一ヵ月間の激痛の大きさが伺える。“藁(ワラ)にもすがる”思いで、全国から来院される

(図 6)目盛りが消えるほど使用している処方された洗浄Syringe

 2泊3日のお付き合いをした中で色々勉強させられた。激痛から開放されると、一気に信頼を得るようになり、今までの不平・不満が噴出する。

多量の鎮痛剤と胃薬で便秘になり、を併発。コーラックが必要になり、薬剤は増えるばかり。
総合病院の口腔外科で流れ作業のように診察しているため、詳しい説明がされていない。
診察の都度、あなたは“誰ですか?”と尋ねられ、毎回、患側を右と勘違いする。
三時間に及ぶ処置のため、左顎関節症(Cliking)を併発。当ClinicのDiathermyで即座に消滅させた。
多量の薬剤と消毒の連続で、その間、肉、魚は摂取できずに体重6.0Kg減少。
今までの処置方針が当Clinicの処置と全く逆の事ばかりを行ってきた。
上着を一枚駄目にするほど出血が多量であった。
インターネットを利用して、患者は相当研究している。常に医療関係者は評価されている状況下に置かれていることを自覚する必要がある。


(図 7)左顔面頬部(頬筋、咬筋部)が一気に陥没したので、体重は怖くて計っていない(6.0Kg減少)。痩せたため、筋肉TrainingのつもりでGumを咬んでいたので、直ちに中止させた。抜歯時に隣接残存歯遠心部に大きな骨欠損ができたため、急性歯根膜炎を併発。咬合調整により咬合圧を軽減。左下唇部麻痺は頤神経損傷によるものである。従来の治療法では麻痺回復には数年必要とするが、Diathermyを応用すると約一ヵ月で知覚回復可能である

 術野を照らしながら注水冷却するため軟組織の損傷はきわめて少ない。Diathermyと併用すると術後疼痛は激減する

 本症例のような骨切削、骨整形の必要な場合は、当Clinicでは超音波サージェリーシステムを使用する。超音波振動で骨を切削・切断するため血管・神経損傷が大幅に回避出来る。安全で効率的な施術が可能になる。口腔外科手術・Implant手術・抜歯には必需品である。

 SG6D:骨切り用ダイヤモンドコーティング。先端がダイヤモンドで、従来のロータリーカッターでないため、血管・神経損傷Riskは大幅に回避できる

Ultrasonic Bone Surgery System

VarioSurg(NSK America Corp)

                ■Dry Socketはドラマ(図1~7) 
患者:52歳、男性

医療面接:睾丸悪性腫瘍摘出(2009/10)、下顎骨整形手術(2008)、その他特記事項なし。

診断および治療経過

2011年10月3日;高度救命救急センターを併設した有名な総合公立病院(群馬県)で左下智歯を抜歯(歯科医二人・手術時間:3時間・多量出血)。
投薬
メイアクトMS錠100mg:5日分、ラックビーR散:5日分、ロキソニン錠60mg:7回分、アズノールうがい液4%:1本、20mlシリンジ。さらに患者本人がかかりつけ医で購入したパーフェクトペリオ(次亜塩素水)で自宅で徹底的な洗浄を繰り返す。その後、激痛で何度も通院。その後も疼痛は消退せず、ロキソニン3回(朝昼晩)服用するようになる。就寝前に鎮痛剤がきれ痛みで眠れなくなると、睡眠薬を処方された。

2011年10月11日;
投薬:ロキソニン:14日分、メコバラミン錠500:4日分、アデホスコーワ腸溶錠20:14日分。さらに鎮痛剤の処方が続き、胃痛を訴えると、胃薬が処方される。担当医にDry socketの疑いを尋ねるが、否定される。

2011年10月25日;
痛みを訴えると、「薬を倍にしましょう!」
抗生物質、鎮痛剤、胃薬など10種類を処方される。「飲みすぎではないだろうか?」と不安がよぎる。下唇麻痺が出現(L:頤神経損傷)。約1ヵ月間インターネットでDry Socketに関して、研究、検索が連日連夜続く。
投薬
ロキソニン錠60mg:14日分、メコバラミン錠500:14日分、アデホスコーワ腸溶錠20:14日分、アプレース錠100mg:14日分、ラックビー微粒N 1%:14日分、マイスリー錠10mg:14日分、グレースビット錠50mg:14日分、カロナール錠200:14日分、ガスターD錠20mg:14日分。

2011年10月26日;当ClinicのHPを検索して問い合わせのTel。

2011年10月27日:
10:00am 当Clinic受診希望のTel。

2011年10月27日;
軽箱バンで深夜群馬を出発。
Escape!!。

2011年10月28日;車中で仮眠を取りながら
十数時間の運転後、当院へ。生理食塩液でSocket内洗浄。Socket入り口の粘膜、肉芽組織の再生を認める。底部は見えないので不明。その後、一連の処置に移行。一ヵ月間に使いすぎていた抗生物質や消毒剤はすべて預かった。久しぶりに夕食(缶入り野菜ジュース、いなり寿司、クリームコロッケ、シュークリーム)が取れる。和歌山市内のスーパー駐車場で車中泊。就寝前にロキソニン1Capのみ服用。

2011年10月29日;9:00amまで痛み無く熟睡。通常当Clinicで処置後、長引く疼痛とStressから一気に開放されるため、熟睡される患者が多い。体重測定すると6.0Kg減少。一ヵ月間疼痛のため、肉、魚を摂取できなかった。趣味の運動を始めてもらって、食事はお肉も食べて体力を付けるように指示。一気にQOLが高くなる。夕食は讃岐うどん、野菜ジュース、大福。局所の消毒は必要ない。受診時にFollowするのみ。車中泊。

2011年10月30日;朝食:サンドイッチ、野菜ジュース。3時間に及ぶ抜歯手術のため、左顎関節症(Clicking)が併発していた。当然、一過性のClickingであれば、Diathermy透射で即座に消退した。激痛から解放されると、今までの不平・不満が噴出した。Diathermy処置をして、今後のCare方法と帰宅後の受診の必要性が無い事も付け加えた。消毒薬は懲り懲りである。“明日から仕事です”と元気に帰路についた。

図5)初診時(2011年1月26日)、処置後、今回の右下智歯以外に将来右上、左上下智歯の抜歯の必要性を説明すると、一日で全て抜歯出来ないか?と尋ねられた
(図4)初診時(2011年1月26日)、X線では底部の著明な白線(Condensing Ostitis)は診られない
(図3)初診時(2011年1月26日)、36歳。抜歯窩低は典型的な乾燥状態は診られなかった。被覆粘膜に炎症状態が強く、14日間の激痛の跡がうかがえる
(図6)患部の湿潤治療が済めば、Diathermy透射。透射後、劇的に激痛は消退。VAS:1/10
(図8)INTRASITE GEL(England)。二次治癒ハイロドゲル創傷被覆・保護材
(図7)お土産に頂いたドライマンゴー
(図9)INTRASITE GEL。テルモノンベベル針22G×1½“を付けると口腔内に使用できる
(図10)INTRASITE GELを乾燥歯槽窩に流し込む
(図11)DS。病名通り“乾燥”が痛みの原因である

ここでは最新論文の一部を掲載した。詳細は本論文または著書“Diathermy”を参考にして頂きたい。
●一般患者様の治療の問い合わせ

(図15)Spongel (アステラス社)を用いるのは、INTRASITE GELの流出を防ぎ湿潤状態を保つ目的だけである。同等品にはゼルフォーム(ファイザー社)、サージセル・アブソーバブル・ヘモスタット(J&J社)、スポンゴスタン(J&J社)など


(図14)肉芽の成長が始まると、Diathermy、Moist Wound Healing、HSPの併用療法で一気に歯槽骨が幼弱肉芽で覆われる

(図13)Moist Wound Healingができたら、内Dの透射とHSPで免疫力を高める

(図12)INTRASITE GELで乾燥歯槽窩を覆い、Spongel でさらに湿潤状態を確保する。必要ならばSpongelを固定するため縫合する時もある。細胞成長因子が侵出してくる

                     ■症例1 DS(図3~15)

患者:36歳、女性

医療面接:アレルギー(ハウスダスト、猫の毛)、その他特記事項なし。
診断および治療経過

2011年1月11日;現地
ベトナムで日本人歯科医を探して、右下智歯を抜歯、縫合。その後、疼痛のため6時間毎に鎮痛剤服用。
2011年1月16日;排膿が続く。
2011年1月20日;再受診、排膿(+)、DSと診断される。抜糸をされるが、逆に食片圧入し激痛。
2011年1月21日~1月23日;経過観察のため毎日受診。
2011年1月24日;激痛が消失しないため、掻爬と再縫合。当院のHPを御主人が検索。
2011年1月25日;午前10時当院に電話予約が入る。深夜ベトナムを出発。
2011年1月26日;
9時間の飛行後大阪着。当Clinicへ。

来院時の薬:バファリンA、ダーゼン、ロルカム錠、Ospamox。この痛みの原因は創部の乾燥(図11)によるものであるから、Moist Wound Healingの原則に従い、まず乾燥を防ぐことから始める。消毒剤は一切使用せず、オゾン水または生理食塩水で抜歯窩を確認後、セファメジンα(注射用)で創面のBiofilm、Debridementを洗浄。INTRASITE GEL(図8)で乾燥歯槽骨を覆い(図9,10)、Spongel(止血用ゼラチンスポンジ)(図15)で流出を防ぐ(図12)。これでMoist Wound Healing湿潤状態が確保された。その後、患部に内科的Diathermy透射(図13)。
透射後、劇的に激痛は消退。VAS(Visual Analog Scale):1/10。従来の方法では考えられない早さである。
2011年1月27日;
半月ぶりに鎮痛剤が不用になり、昨夜は熟睡できた。患部をオゾン水で洗浄(洗浄といっても、洗うのではなく、経過を診るのが目的である)。INTRASITE GELを追加し、Spongelでカバー。右下智歯部、右顎下リンパ節の内科的Diathermy透射。VAS:5/10。現地では日本人は水道水を飲用すると下痢をするので、食用にはペットボトル水を使用するようである。帰国後、自宅での洗浄用にディスポシリンジを渡し、その足で空港へ。
 航空料金、ホテルの旅費、時間的制約、納得して戴ける結果(除痛)を出さなければならない・・・誤魔化しのきかない一発勝負に臨んだ。長い歯科医師人生の中で、最もプレッシャーがかかった症例であるが、有能なスタッフのサポートとチームワークで
喜んで帰路について頂けた。今後、PTSD(Posttraumatic Stress Disorder)を懸念する。
論文詳細:デンタルダイヤモンド2011年9月号掲載をUPDATE!!

Dry Socket(ドライソケット)最先端治療法

                   従来・現在の治療法

 
 何十年も進歩は見られない。最近になって抜歯窩を強い消毒液で洗浄しない医院が見られるようになったがまだまだ少ない。歯学部、大学病院でも消毒液を使用している所が多い。これだけ医学が進歩しているのに、抜歯で激痛に振り回されているのはおかしいと思わないのだろうか。患部を毎回強い消毒液(イソジン、リバノールなど)で洗い、鎮痛効果のある薬剤や、消毒抗菌作用のある薬剤(ケナログ軟膏、テトラサイクリンCMCなど)を患部に填入し、その上をパック剤(サージカルパックCOE-PAK)で覆う方法が一般的である。テラ・コートリル軟膏付きのガーゼを抜歯した穴に軽く詰めなさいと記載しているのもある。痛みが長引く場合は、抜歯窩再掻爬術である。骨面を掻爬するだけでなく、変色した骨の壊死部分や吸収しにくい骨鋭縁部分を破骨鉗子で除去する。骨バーを用いて骨壁を切削除去することもある。再掻爬後には縫合して血餅を保護する。さらに抜歯窩周囲の骨縁を整形して完全閉鎖することもある。このように血餅の形成を促して、局所と全身への抗生物質と鎮痛剤の長期投与。さらに度重なる局所の消毒などが行なわれ、そのうち治る(自然治癒を待つ)という言葉を信じて、患者はただ耐えるだけである。何を処置しても特別な効果が期待できないのが実情である。QOLの低下は著しい。

                     
◇◇◇

 この論文を読み終わる頃には、
今までの原因、治療法が間違っていたのに気付くであろう。DSとはその名の通り、“乾燥”している事が問題である。傷が乾燥、乾いていれば痛いのは当然である。Moist Wound Healingの原理に従って、傷をまず湿潤状態にすれば楽になる。血餅でなくても“代替え材料”で良いのである。Diathermyを用いた物理療法で充分対処可能である。120%予防も出来る。“誤った医学常識”から一日も早く脱却することを望む。
 現行の治療法は褥瘡を毎日強い消毒剤で消毒し、ガーゼを当てて乾燥して治らない治らないと言っているのとまったく同じである。抜歯窩も同じでMoist Wound Healingを適応してDiathermyとHSP・温熱療法の三者併用すればDSなど併発するはずがないのである。事実、
筆者は35年余りDSを併発させたことはない。

表1)DSの今まで考えられてきた原因(国内)

 大学病院、歯学部口腔外科、公立病院口腔外科など、どこで治療しても基本的処置方針は変わらない。進歩もない。攻めの治療ではなく、守りの治療である。約一ヵ月に及ぶ自然治癒を待つだけである。Diathermyを発表した初期の頃は、半信半疑の目で見られた。しかし現実の臨床には好結果が次々と出てくる。Dry Socketの治療、予防に関しては、他のClinicにはない世界で唯一のClinicだと思う。うがいのし過ぎではない。患者側の責任ではなく、術者側の問題である。前処置をして抜歯すれば120%予防も可能である。下図は海外論文にも類を見ないDry Socketの早期治癒過程を示す当Clinicでの症例である。

患者:34歳、男性(大阪)

医療面接:右足首靱帯Ope(14歳)、左膝骨折Ope(27歳)、喫煙(5本/日)その他特記事項無し。

診断および治療経過:
Family Doctor(かかりつけ医)の紹介で総合医療センター口腔外科(大阪基幹病院)で左智歯抜歯後、DS発症。2~3週間ガーゼ交換のため通院。交換時の激痛に懲りた。 今回、右智歯に際してFamily Doctorに、また、前病院を紹介された。過去の苦い経験から当Clinicを受診。遠い他府県でも受診を覚悟をしていたようだ。


2016年2月5日;
当Clinic受診

2016年2月8日;
 ●投薬:グレースビット3日、エンピナース3日(前投薬)
 ●HBV、HCV検査依頼

2016年2月18日;抜歯手術 
 ●投薬:ポンタール7日分

2016年2月19日;術後Follow、鎮痛剤服用(-)

2016年2月22日;抜糸

(図 3)12日目(10月6)。抜歯窩は全て完全に肉芽組織で覆われている

(図 2)4日目(9月28日)。Diathermyの効果が得られ、歯槽骨表面は幼弱肉芽で覆われ始めている。一部に血管新生が診られ、容易に出血するようになった(歯槽中隔部)

                   局所的な原因・誘因
    ・抜歯中の骨への外傷
    ・抜歯中・後の創の感染
    ・歯槽内骨壁が異常に緻密
    ・口を漱ぐ、傷を吸うことによる血餅形成不全
    ・過剰な線維素溶解因子の作用による血餅の早期喪失
    ・抜歯後の喫煙
    ・抜歯後の過剰な洗浄または過剰な掻爬
    ・抜歯窩に残留した歯根、骨片、異物
    ・術前から存在した感染
    ・局麻中の血管収縮剤(エピネフリン)による出血量の減少
    ・喫煙の有無
                全身的な疾患(二次的発生要因)
    ・心疾患、肝疾患、糖尿病、梅毒、貧血、出血生素因、内分泌異常、            神経疾患など

 下記症例は骨吸収抑制薬関連顎骨壊死(BISPHOSPHONATE-RELATED OSTEONECROSIS OF THE JOW)と類似の臨床像を呈するが、発生機序が全く異なる。この状態で掻爬しても、出血(血液供給)は到底望めないし、新鮮血が出るまで骨削除する事は、顎堤保全をLIFE WORKにしている筆者にはできない。条件と環境を整えてあげれば、生体は喜んでRECOVERYしてくれる。 D.S.(SYNDROME)は骨感染(NECROSIS)ではなく、OSTITIS(骨炎)であるため、今までNECROSIS排出は認めた事が無い。臨床所見はDRYと言われるが、CELL BIABILITYは高い状態と思われる。いかに環境因子を優しく整えてあげるかである。

(図3)下歯槽管との距離、智歯歯根状態を診断

 我が国の報告を調べて見ると患者局所の状態のみに原因を求めているが、術者本人のSkillに起因する事が大きい点を一切挙げていない。外科処置である限り、術者側にも原因を考えるべきである。筆者の方法を用いると、全身的要因はあまり考えなくて良い。上記全身的疾患でも 120%対応可能である。内科的Diathermyを中心とした物理療法はDS患者のQOLを一気に高めることができる。

 激痛から当日解放!ジアテルミー・湿潤療法・HSPの三者併用療法で劇的に治癒する。毎日通院して、強い消毒薬で洗浄していても、逆に治りを遅くする。詳細及び治療法は著書“Diathermy”を参考にしていただきたい。全国では、毎日強い消毒薬で傷口の洗浄をしてもらい、じっと激痛に耐えている多くの患者がいる。全国からの問い合わせや来院患者が多いが、遂に海外(ベトナム)からも来院!
(図17)2008年10月28日。2年前のパノラマと比較すると、前回左下智歯の抜歯に比べると今回は難易度は低いのに、右下智歯遠心部の骨開削(↑)が必要以上に大きい。不必要な侵襲を加えた術者側に問題がある
(図16)2006年9月7日。左下智歯抜歯前の状態

                           ■症例2:DS (図16,17) 


患者:23歳、女性
医療面接:喘息(幼児期)治癒、その他特記事項なし。
診断および治療経過
2008年10月24日;某歯科医(大阪)で右下智歯抜歯。ジスロマック、ロキソニン、酸性水投与。
2008年10月25日;DSを併発。発熱、開口障害、睡眠不足。毎日、局所洗浄に通院。
2008年10月27日;レフトーゼ、ボルタレン、ロキソニン、酸性水投与。2種類の鎮痛剤が処方されている意味が分かりかねる。痛みが強い時にはボルタレン、少し和らげばロキソニンで・・・と良いように理解しておこう。まさか2種類同時服用さすような危険な事はしないであろう。全く改善が診られないので、
2008年10月28日;勤務地大阪より来院。牙関緊急が強いので、右下智歯部局麻下にてオゾン水で優しくソケット内を洗浄。クラビット、ノイダーゼ、ポンタールを即座に内服させ、INTRASITE GELをSocket内に流し込む。さらにSpongelで閉鎖する。その後、内科的Diathermy透射。右下顎角部外側、顎下リンパ節、抜歯窩にDiathermy透射。QOLが一気に上がった。この時点で、
激痛から解放される。当然、入浴、洗髪も可能である。アテネレン投与。
2008年10月29日;右下顎角部外側、顎下リンパ節、抜歯窩にDiathermy透射。セルシン、ポンタール投与。
2008年10月30日;右下顎角部外側、顎下リンパ節、抜歯窩にDiathermy透射。ポンタール投与。数日間睡眠を充分取れていなかったので、セルシンを投与すると12時間爆睡。痛みから開放される。開口障害が残っているが、早期にブラッシングを再開。
2008年10月31日;治癒。局所と顎下リンパ節に透射。
 この患者は過去学生時代(2006年)に左下智歯の埋伏歯を当院のDiathermyを併用した無痛手術で抜歯している。その時が非常に楽だったので、今回も右下智歯は楽に抜歯してくれると思ったようである。通常の手技で抜歯すれば今回の状態は起こり得ることである。

(図20)INTRASITE GELをSpongelで閉鎖。“代替え血餅”になる
(図19)初診時(2008年3月5日)。X線では底部のCondensing Ostitis?
(図18)初診時(2008年3月5日)28歳。抜歯窩底部は真っ白な緻密骨が露出状態
REFERECES

1)竹内義和:ドライソケットの最先端治療法-Diathermyを求めベトナムから,デンタルダイヤモンド,36(526):138-144,2011.


著書“Diathermy”の著作権侵害となるため、禁無断転載・複写。

                 ■症例3:DS (図18~20) 

患者:28歳、男性
医療面接:バッファリンで口唇炎、その他特記事項なし。
診断および治療経過
2008年2月28日;某歯科医で左下智歯の抜歯。
2008年3月3日;DSを併発。ケナログ軟膏、テトラサイクリンCMC(塩酸テトラサイクリンパスタ)を抜歯窩に入れ、フロモックス、ボルタレン投与で経過を診ていたが、激痛が増大したため当Clinicに紹介された。
2008年3月5日;耳、頭、頭部に夜も眠れないほどの激痛。食事の時の接触痛。この痛みの原因は創部の乾燥によるものであるから、まず乾燥を防ぐことから始める。ここでも消毒剤は一切使用せず、オゾン水または生理食塩水で創面のBiofilm、Debridementを洗い流し、INTRASITE GELをSocket内に流し込む。流れ出ないようにSpongelで閉鎖する(図20)。これでMoist Wound Healing湿潤状態が確保された。その後、内科的Diathermy透射。
麻酔も投薬もせずに全ての処置が終了した時点でVAS:1/10に低下した。
2008年3月10日;5日後、疼痛から解放された(図14)。